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2013.08.22 (Thu)

A NYC Taxi Driver Wrote

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Google+, Zen Moments (blog)

配車を受けた私はレンガ造りのアパートにたどり着き、クラクションを鳴らした。数分待って、もう一度クラクションを鳴らす。私は夜勤だ。おそらくこれが今日最後の仕事だろう。このまま走り去ることも一瞬考えたが、車から下りた私は部屋の扉をノックしに行った。

「ちょっとだけ待ってください」。弱々しい声が部屋の中から聞こえた。何かを引きずる音が聞こえた。長く感じられた時間の後、扉が開いた。そこには90代と思われる女性が立っていた。プリント柄のワンピース、ベールの付いた小さなつばなし帽(pillbox hat)を被った彼女は、まるで1940年代の映画から抜け出したようなイメージだった。足元にはナイロンの小さなスーツケースがあった。


部屋はずいぶん前から使われていないふうだった。家具はすべてシーツで覆われ、壁には時計がなかった。部屋に装飾品のたぐいはなく、部屋の隅に置かれた段ボールに写真など細々したものが入っているのが見えた。
「スーツケースを運んでもらえませんか」。女性に言われた私は、荷物を運んでトランクに入れ、扉の前にいた女性が無事にタクシーにたどり着けるよう手を添えた。彼女は感謝しっぱなしだった。私は「なんでもないんですよ。お客さまは自分の母親だと思ってお世話差し上げようと思っています」と答えた。
「ああ、いい息子さんなんですね」彼女は言った。

シートに座った女性は目的地を告げ「街場を通ってもらえますか」と訊ねた。「遠回りになりますよ」と答えた私に女性は「構いません」と言い、「急いでませんから。目的地はホスピス(末期医療施設)なんです」と添えた。ミラー越しの彼女の表情は少しだけ華やいでいるように見えた。
「家族はすべて亡くなりました。お医者さんはわたしももう長くはないって言うんです」。穏やかな声で彼女は続けた。私はそっと手を伸ばし、メーターを切ってこう訊ねた。「わかりました。それではどこを通りましょうか」。

2時間のドライブだった。彼女は私に若いころにエレベーターガールを務めていたというビルを教えてくれた。新婚時代はここに住んでいたのよ。学生のころはここでよくダンスをしたの。ダンスホールは家具倉庫に変わっていた。彼女はときどき街角で速度を落としてくれるよう頼み、暗がりをのぞき込むように無言で目を凝らした。
空が少しずつ明るくなってきた。目を閉じた彼女は「疲れたわ。もう行きましょう」、そう言った。

目的地に着いた。車寄せにタクシーをまわすと看護師が2人出てきた。彼女の到着を待っていたようだった。私は車から下り、トランクを開けてスーツケースを取り出した。看護師に支えられた彼女は車いすに収まった。
「おいくらですか」財布を取り出した彼女は訊ねた。「いいんですよ」私は答えた。
「だってあなたはこれで生活してるんでしょ」。「他にお客さまはいくらでもいますから」。そう答えた私はほとんど無意識に身をかがめて彼女に両手を伸ばした。その瞬間、彼女は車いすから身を乗り出し、か細い腕で私をきつく抱きしめた。「こんな年寄りに…、でもうれしかったわ」彼女は呟いた。「ありがとう」。

彼女の乗った車いすは建物の中に消えた。生命の再生を伝える明け方の日差しを拒むように扉が閉じた。車に戻った私は客を拾うことを忘れ、あてどもなく車を走らせた。
何て言ったらいいのだろう。うまく言葉に表せられないが自分のしたことについては満足していた。そしてクラクションを鳴らした後、走り去っていた時のことを考えた。

今から20年前の夏の出来事だ。しかし私の人生でこの瞬間ほど大切な時間はなかった。
私たちは、人生には素晴らしい瞬間が点在していて、その間を縫うように送るものと考えがちだ。しかし実際にはこうした瞬間は、人知れず不意にやってくる。そして他人にとってはごく小さなエピソードが心に深く根を下ろす。


130822d0.jpg

Tags : Cool | US |

cool | (17) comment  EDIT

Comment

感動~~~♪

なんか、じぃ~んと来ちゃった

エロ・グロ・スカシだけじゃないHEAVEN

ますますファンになりそうdes....
裸族のひと | 157008 | 2013年08月22日 19:49 | URL 【編集する】

相当いい話でした。
いつもありがとうございます。
裸族のひと | 157009 | 2013年08月22日 19:49 | URL 【編集する】

おぉ…
なんと謂ったら良いんだろうか
とてもグッときました…
ちゅっちゅ | 157013 | 2013年08月22日 19:58 | URL 【編集する】

翻訳ありがとう。
たぶん一番すきな記事。
裸族のひと | 157014 | 2013年08月22日 19:59 | URL 【編集する】

なんか言葉になりませんね・・

夫が介護タクシーの仕事をしていますが、これに似た話を時々してくれます。

自分に残された時間が少ないこと、二度と家には戻れないであろうこと・・
もう一度見たい場所をまわってからとか、涙なみだの別れなど・・

さみしいけれど、みんな経験することなんでしょうね。
裸族のひと | 157015 | 2013年08月22日 20:30 | URL 【編集する】

GOOD!
映画「SMOKE」を見終わった時のような余韻
裸族のひと | 157017 | 2013年08月22日 21:37 | URL 【編集する】

日本に詐欺が多い理由がわかった気がする。
裸族のひと | 157028 | 2013年08月22日 23:27 | URL 【編集する】

ホント人生いろいろあるもんね。

>目的地に着いた。
>車寄せにタクシーをまわすと看護師が2人出てきた。
>彼女の到着を待っていたようだった。
>私は車から下り、トランクを開けてスーツケースを取り出した。

この続きが
>看護師に支えられた彼女は車いすに収まった。
でホントにホッとした。

・看護師が声をかけるが返事がない。
・看護師の声が大きくなる。
・そしてその声は女性の名前からドクターの名前に代わる。
・やがて悲痛な叫びが辺りを包む。

って感じを勝手に想像してた。
うん、裏切られてホントよかったです。
タナトス | 157029 | 2013年08月22日 23:34 | URL 【編集する】

思わず涙が出ました。
翻訳ありがとうございます。
☆ | 157035 | 2013年08月23日 00:40 | URL 【編集する】

たしかに、人生のおいて『その時』は何の前触れもなく突然訪れる
裸族のひと | 157037 | 2013年08月23日 02:04 | URL 【編集する】

いかん、不覚にもホロッとした。
Humpty.A.Dumpty | 157038 | 2013年08月23日 02:34 | URL 【編集する】

いい話だ

しかしこの話のようにホスピスに行けるヒトは幸せなのかもしれない。お金の問題や受け入れ可能なホスピスの数の問題。
そして病状によっても受け入れの可否は変わってくる。

日本の場合、いまは老人の介護ビジネスが盛んだが、つぎに来るのがターミナルケアビジネス・・・どう死なせるかのビジネスになるだろう。そしてその事は脱法ケアハウスのように異常な詰め込みハウスの中で工業的な痛み止め処理を生み出すようになるのかもしれない。


地球外のヒト | 157042 | 2013年08月23日 06:03 | URL 【編集する】

SMOKEのラストを思い出すエピソードですね。
確かにこういう瞬間は不意にやって来るものなんでしょうね。
カルデラ湖 | 157045 | 2013年08月23日 08:04 | URL 【編集する】

わし、51のおっちゃんやねんけど、この歳になるまで色んな人間に会うて来たで。ええ人、根性悪い人。
若い衆に言うけど、この話を創作や釣りという人間にだけはなって欲しないなあ・・・・・・・
51no ottyann | 157131 | 2013年08月25日 03:58 | URL 【編集する】

これはヤク中タクドラの創作釣り文章
裸族のひと | 157151 | 2013年08月25日 13:01 | URL 【編集する】

本当にささやかで素朴で、陽だまりみたいなお話。

最後の三行にとても共感しました。
極楽パンダ | 157169 | 2013年08月26日 01:42 | URL 【編集する】

今までの人生に思いをはせると、郷愁とも、懐かしさとも言い難い、
ほろ苦い気分になりますねぇ。 ^^

心に滲みるストーリーですね。
Rust | 157174 | 2013年08月26日 03:30 | URL 【編集する】

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