2006.12.25 (Mon)
意識障害の夫が甦ったのは夫婦愛

―燕趙都市報―
黄河の北にあるということで名が付いた河北省。 なかでもこちら泊頭市は、梨の産地として知られます。 ここに暮らす夫婦、夫がある日交通事故に遭い、人事不省に陥りました。 何度かの危篤を乗り越えながらも夫の意識はもどりません。 妻は夫を家に連れて帰り、毎日献身的な看護を続けました。 目を醒まさぬ夫に絶えず話しかけ、歌をうたい、1年が過ぎました。
つい先日、その夫がとつぜん意識をとり戻しました。 聖夜にひとつ、感動的なお話を。
恩希洪さんと王秀芹さんとはともに泊頭市に生まれ、学生時代に恋に落ち、卒業後結婚して子供をもうけました。 夫の王さんの仕事は技術職、妻の王さんは学校の先生として、子供が授かってからも仕事を続けています。 そんな幸せな家庭を打ち壊したのは一件の事故でした。
2005年6月13日、夫の恩さんは帰宅途中、国道を横切ろうとして車にはねられ、病院に運ばれました。 診断は脳挫傷。 意識障害に陥っていました。 入院一ヶ月で病状は好転せず、また合併症が発症したため、王さんは泊頭市の病院から天津環湖醫院へと転院させました。 しかしここでも恩さんの意識障害は改善されず、四ヶ月後、王さんは仕方なしに父母が住む実家にひきとることを決意しました。
泊頭市の法医学者の鑑定では、夫、恩さんの病状は 「一級障害、植物状態」 という厳しいもの。 事故直後は、まさか夫がこんな姿になるんてと信じられなかったという王さんは、朝、目が醒めればすべてが夢だったと何度思ったか知れないと、いまでは笑います。
しかし時がたち、現実を受け入れざるを得なかった王さんは決意しました。 もしこのまま夫が一生寝たきりのままだったとしても、わたしは一生夫の面倒をみようと。
王さんの試練がはじまりました。 まず毎日の食事は鼻からの流動食。 大小便の処理からはじまって、学校から帰ってくるとベッドの前にずっと付き添い、体を拭き、マッサージを続けます。
今年の春先は、とくに大変でした。 高圧酸素室で治療をおこなうため、学校から家までの十数里を自転車を駆って帰ってきた王さんは、叔父といっしょに車に恩さんを乗せ、病院に通ったのです。 ここでも王さんは高圧酸素室に夫とともに入り、耳鳴りを我慢しながら夫の手を握り続けました。
いつしか、一縷の望みでもあれば決して希望を棄てないという信条をもつようになっていた王さん。 天津での入院中でも絶えず話しかけると同時に、息子の唄う童謡も録音し、恩さんの耳許で聞かせました。 不思議と恩さんも息子の歌を聞くと、血圧計の針がすこしばかり揺れたといいます。
王さんがとりわけよく話して聞かせたのは、二人の学生時代。 ともに学びながら、日差しの戯れる公園でむつまじく語り合った日々。 あのときあなたはどうだったかしら…、感情を失った夫の耳許に語りかけながら、いつしか涙が枕許に滴りおちる日も少なくはありませんでした。
王さんは学校の先生という職業柄、まとまった休みをとれる訳ではありません。 毎日の看護は夫の身のまわりの世話で精いっぱい。 夏休みに入り時間のできた王さんは考えました。 夫に数を数えさせてみようと。
まずは夫の手をとり、1と声に出して数え、次に夫の指を1本握るのです。 2なら2本、3なら3本と毎日くり返していくうち、ふと1と唱えた時に夫が自ら指を伸ばしました。 目を疑った王さんは再度試みます。 夢ではありませんでした。 人事不省の夫がはじめて王さんの言葉に反応したのです。
ひとつ足がかりの出来た王さんは、何度も何度も数を唱えては夫に指を伸ばさせます。 回復の速度が増し、足し算引き算と指をつかって計算できるようになった頃、ついにその日が来ました。 恩さんが妻と息子の名前を呼んだのです。
甦った恩さんは、それまでの流動食から自分で食事をとることができるようにもなりました。 ほぼ1年の意識障害の後のみちがえるような進歩です。 夏休みの終わった王さんは、夫に食事をつくる楽しみを再び見いだしました。 そしてそれはあの頃、毎日が夢でいっぱいだった頃、二人が結婚したばかりの頃を王さんに思い出させました。
21日、記者は窓から冬にしては暖かな日の差し込む部屋に招かれました。 家族はトランプに興じていました。 いい札をとったかのような恩さんはちょっとだけ得意そうな表情をかいま見せると、無邪気に微笑んだままです。
「すごい進歩でしょ? 毎回うまくなるのよ」
喜劇を選んでテレビを見せるようになってから、表情に笑みがもどったそうです。 事故に遭う以前はよく喋り、笑みが絶えなかったという恩さん。
「私のほうが口数が少なくてね、夫とは正反対だったんだけど」
二人は立場を変え、二度目の恋をはじめているかのようです。
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